さしのみ

東大で法律学んでる傍ら、高齢化とその他諸々の本、論文の要約レビュー等をやってます。感想・ご意見等、時間の限り書いて寄越してください。

不眠

今日も寝られない。いつものことなので、今日はエイヤと一息、未明からパソコンに向かっている。 昨晩、夕食を取り終えてから、妙に腹の調子が悪くなった。グルグルと獰猛な音がひっきりなしに響いて、どうやらガスが溜まっているらしかった。どうにもやるか…

過去の囚人か、それとも未来の開拓者か。

不肖ながら、二十余年も生きていると、自分でも信じられないような不義理や無礼を働いてしまうことがある。失敗といってもいろいろで、自分の為そうと思ったことを途中で止めてしまったり、或いは予想外の結果を招いてしまったりと、その裾野は広い。しかし…

男らしさと真珠と尿結石

真珠の養殖は日本で初めて開発されたらしい。貝の中に無理やり異物を押し込んで、その異物が貝の中で少しずつ真珠になっていく。真珠の成分は貝殻と一緒だそう。貝からしてみれば、自分の中の異物をどうにかしようと、その結果としてできたものに過ぎないの…

責任

「何でも持てる体力をつけることだよ、どんな重さのものでも」 最近、とんねるずにハマっている。上の言葉は、貴さん目当てで見た『リシリな夜』(TBS系列)にて、「モテる秘訣は何ですか」という質問に対して、作家の伊集院静さんが発した言葉である。ああ、…

海風の気風

前川清さんの名曲「長崎は今日も雨だった」を聴くと、ふいに、修学旅行で訪れた長崎の港町の白と青入り混じる町並みが思い出される。山と海に囲まれた程よい雑踏は、都会らしい卑屈さとは無縁の不思議な清々しさをたたえていた。雨続きの長崎をうたった名曲…

スウェーデンの「息苦しさ」

スウェーデンの社会保障政策を勉強しておりますと、社会保障の名の通り、人々の最低限の生活ラインを保障する 意識と実際の施策の手厚さに感心させられるわけでして、Det tryggaste samhället(最も安心安全な社会、というような意味)と自国社会を形容した友…

儀式

『死の家の記録』の中で、普段は荒くれ物の流刑囚たちが、キリスト降誕祭に際して、まるで別人のように粛々とふるまう描写が登場する。世の規則に背いた悪党どもが、自らの意志で、何の義務もないルールに身を服している姿は、どこか微笑ましい。 囚人たちの…

笑い飯と時間感覚

ふとした契機でカジサックと笑い飯の共演動画を見た際、笑い飯の哲夫が何気なく言ったことに考えさせられた。 笑い飯は幾度もM1決勝に出場しながらも優勝に一歩手が届かないことで有名であった(2010年に遂に優勝)。カジサックを含めダイアン、NON STYLEと様…

将来予測の不確実性【スウェーデン介護産業における顧客のニーズ】

郵政民営化なんてのが最も印象的ですが、最近の水道民営化案で揺れる日本と同じく、高福祉高負担国家スウェーデンでも民営化は最大の政策上の関心の一つであります。中でも、介護産業は、元来政府が税金で運営していた業界であるため、その民営化が非常な注…

象徴天皇と神話

NetflixのCrownってシリーズは、イギリスのエリザベス2世陛下の若かりし頃を扱っておりまして、同じ王室を頂く国の出身者として考えさせられるところも多いわけです。物語の冒頭、若き女王が民主主義の時代における王室の意義について葛藤していると、女王の…

テスト前の緊張にどう立ち向かうか、という話

歳が変わりまして、いよいよテストの季節になってまいりました。中学校受験にはじまり、年の初めというのは常に大事なテストが目白押しでして、入学試験、期末試験、センター試験と、学生を困らせるイベントが盛りだくさんって具合なんですな。 僕個人は筆記…

人間の性的欲求を進化心理学で解明するぜ【第三回 体目的の。。。】

リクエストをいただいたので、少し長めに書いてこうかなと思っとります 早速ですが、以下のような状況を想像してください。 あなたは大学生で、昼休みに自分の大学のキャンパス内を歩いています。授業も一通り終わって、徐々に日も傾いてきています。そんな…

孤独を感じると認知症になりやすい、っていう研究

一人暮らしの老人は認知症になりやすいぜ、っていうのは高齢社会学では長年指摘されてきた問題点でありまして、いわゆる「独居老人」の問題を解決しようと行政も市民団体も研究者もこぞっていろいろな施策を打っている昨今ですが、そんな中、客観的に孤独な…

瞑想の種類とその効用

昨年スタンフォード大学のサマースクールに参加したんですが、その主目的の一つはマインドフルネスのメッカ、スタンフォード大学でマインドフルネス=瞑想が如何様に教えられているか体験しに行くこと。教室に入ってみるとあらビックリ、高校生から博士課程…

「高齢者」というカテゴリー分けの問題点

「お年寄り」「若者」なんて世代論にはじまり、「男」と「女」、「学者」と「実業家」などなど、社会を様々グループ分けして話をすることは日常茶飯事じゃないかと思っておりまして、最近の若者はSNSのせいで人間関係が希薄だ、なんて具合に特定のグループに…

人間の性的欲求を進化心理学で解明するぜ【第二回 男性の欲求】

前回は女性の性的欲求について記事にしましたが、今回は男性の欲求について紹介しようかなと思っております。引き続き、The Evolution of Desire、よろしくお願いいたします。 naoshiaut.hatenablog.com The Evolution of Desire: Strategies of Human Matin…

双極性障害についての大規模な追跡調査の結果が公表されてたよ、ってお話

好きにな友人のうち、BIG5でいう神経症傾向が高いような人が多いことなんかから、精神病関連の研究に興味を持ち始めたんですけれども、今回は双極性障害に関するアメリカ・ミシガン州のコホート研究の結果に関する論文をメモ。 双極性障害ってのは一般に躁鬱…

スウェーデンモデル入門

日本にいたころ、スウェーデン政治の手頃な入門書が分かんなくて困ってたので、いくつか紹介。 本日紹介するのは以下の2つ。 Alestalo, M,. Hort, S., and Kuhnle, S. (2009), "The Nordic Model: Conditions, Origins, Outcomes, Lessons", Hertie School o…

人間の性的欲求を進化心理学で解明するぜ【第一回 女性が望むもの】

進化心理学の入門書として読んだThe Evolution of Desireって本が、男女の性戦略に関する科学的知見の宝庫で、非常に面白かったのでメモ。最新の2016年版は英語版しかありませんが、旧版は日本語訳されているようなので興味あればぜひ。 The Evolution of De…

高齢者に対する見方を変えようぜ、という小論

最近、片っ端から著作を読んでるのが、ルンド大学のヨンソン博士なんですが、彼のメインテーマの一つがAgeism(高齢化は心身の弱体化と不可避に結びついているという考え方、或いはそれに基づく行動やシステム)を如何に克服するかってことでありまして、それ…

メタ認知瞑想で共感力が高まるよ、という研究

「汝自身を知れ」は「そだねー」もびっくりの、世代と地域を超えた流行語大賞なわけですが、この格言を冠した論文がドイツ、マックスプランク研究所の研究者らから発表されました。念のためですが、「そだねー」ではなく、「汝自身を知れ」の方です。 近年、…

【移民大国スウェーデン】スウェーデン生まれと移民とで別の介護システムが必要なん?ってお話

恥ずかしながら、実際に訪れるまではスウェーデンって白系ネイティブ・スウェーデン人だらけだと勘違いしてたんですが、実のところ世界指折りの移民国家だったわけであります。 数字上で見ますと、2014年時点で全人口の16%が外国で生まれた人なんだと。ちな…

万事塞翁が馬、って考えると人はヤル気になる!って研究

英語にはEvery cloud has a silver liningっていう諺があって、「どんなつらい経験をしても、いつかは良い時が来るんだから、絶望してはいけない」ってな具合の意味なんですが、この諺を信じてると人間はヤル気が出るってことが科学的に証明されたんでご紹介…

社会問題批評の枠組みのお話

日本ではいじめや汚職なんて社会問題は日々のニュースの大部を占めているわけですが、お国が変わっても、同じようなことは言えるようで。 今回取り上げる論文は、スウェーデン国内の介護施設におけるスキャンダルと、それについての議論の前提についての小論…

三人称で負の感情が楽に和らぐよ、という脳科学研究

最近、遺伝子と脳科学と精神病理にハマっているわけなんですが、題名通り今回は人称代名詞を変えるだけで負の感情を抑えられるよ、というネイチャー論文をお送りいたします。 他人事なんて言葉があるように、元来、人ってのは他人には自分事ほど強い感情を持…

「高齢化を考える」の3様式

Contemporary Perspectives om Ageism(2018)の第22章Ageism and the Rights of Older People(Taghizadeh Larsson, and Jönson, 2018)という小論から。 高齢者の定年後を専門に勉強してると、地味地味と周囲から言われてしまうわけなんですが、意外にもダイナ…

お笑い芸人と精神病

芸人中でも、「この人、なんか変わってるな」と感じる人ってのは結構いるもんで。僕は個人的にダウンタウンの松ちゃんと、さんまさんが大好きなんですが、お二人とも人格的な暗さが垣間見えるところが面白いんですよ。 これを裏付けるような研究が、オックス…

「日本人論」再考 ~「近代化」不安克服の精神史的状況~

留学先で、「日本」というカテゴリーは、主観的にも客観的にも僕を規定する最大の要素の一つになっておりまして、色々考えるところ。今回は、以前直接お会いした、船曳先生の著作をざっくりまとめておきましたんで、ご参照のほど。 「日本人論」再考 (講談社…

【書評】丸山眞男―リベラリストの肖像

戦後知識人の白眉、丸山眞男の思想と人物像を、同じ東京大学日本政治思想史教授の著者が語っている。 僕が丸山を知ったきっかけは、後述するように、幼少期の全く偶然の出来事だったが、ほかの人も授業や書店で一度はその名を耳や目にしたことがあろう。駒場…

【書評】トレイルズ

アパラチア山脈に沿って三千五百キロに及ぶ自然歩道、それがアパラチアン・トレイルである。著者ロバート・ムーアは五カ月かけてその全行程を歩きとおした。そして彼は、「トレイル」というものそのものについて、考え始める。 トレイル、それは「道」である…