さしのみ

東大で法律学んでる傍ら、高齢化とその他諸々の本、論文の要約レビュー等をやってます。感想・ご意見等、時間の限り書いて寄越してください。

人間の性的欲求を進化心理学で解明するぜ【第二回 男性の欲求】

前回は女性の性的欲求について記事にしましたが、今回は男性の欲求について紹介しようかなと思っております。引き続き、The Evolution of Desire、よろしくお願いいたします。

 

naoshiaut.hatenablog.com

 

 

The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating

The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating

 

 

さて、前回は女性の欲求が、男性の持つ資源の多さ、男性の将来的なコミットメント、男性の肉体的強さの3つの軸からなっているよー、というお話をしましたが、男性の欲求はよりシンプル。ずばり、「若さ」「外見」、そして「貞節さ」。男ってバカだなーの定型句は読み終えてからでお願いします笑

 

まず、男性は「若さ」を好む、ということは女性の生殖能力と関係があるとされています。本書では女性は十代で性的成熟を迎えたのち、二十代半ばを期に徐々にその生殖能力が低下していくとしています。今でこそ、母親が三十代の時に生まれた子供の方がIQが高い傾向があるだとか、三十代の方が精神的、社会・経済的に女性が安定していて子育てに集中しやすいだとか、いろいろ言われておりますが、生物学的に安全に、かつ身体が丈夫な子供を産む、という観点では、若いほうが良いんでしょう。事実、男性の精子は日々新しく生産される一方で、女性の卵子は子供のころに作られて以降は新しく生産されることは無く経年ダメージが蓄積しやすいことも、低年齢の方が出産に向いている(妊娠しやすく、卵子へのダメージが少ない)と言えるんでしょうなぁ。

「若さ」への執着という点で、男性は女性のパターンとは異なっております。つまり、女性が一生を通じて自分より三歳程度年上の男性を好む傾向があった中、男性は二十歳直前の女性を最も好み、男性が十代のころは年上、二十代を超えると年を取るごとにますます年下好きになる傾向があるということですね。男は二十歳を過ぎると若い娘の後を追っかけるようになる生き物なわけです。

意識的かどうかは分かりませんが、女性がいつの時代も「若返り」に執心しているのは男性のこの傾向のせいかも。現代の化粧でも、ファンデーションで肌を均一的に白くし、かつシャドーなどあの手この手で目を大きくするのも、肌が白く均一で顔に対して目の比率が大きいことが幼い顔の特徴であることと一致しますねー。

 

さて、第二の趣向は「外見」。

これも女性の生殖能力との関連で説明されております。重要な点は、全世界共通で好まれる一つの理想的な体系、顔立ちがあるわけではないようなんですが、一方で、男性が女性よりもパートナーの外見の重要性を高く評価している点。どの文化圏でも男性は女性を外見で判断しがち、ということですね。。。

なんだか女性がやるせない気持ちになりそうな結果ですが、女性の体形についてもいくつかの示唆がされておりまして、そのうち2つをご紹介します。

まず、これはアメリカの研究なんですが、一般に女性が思う女性の理想的体形は、男性が思う女性の理想的な体形よりも痩せ気味になる傾向が。しかも、「どんな体形が男性に最も好まれると思いますか」と聞かれても、実際の男性の調査結果よりも痩せ気味の体系を女性は選ぶ傾向にあるんだと。標準かやや太り気味好きを自称しているので、これが日本人にも当てはまるとすると由々しき事態。

次に、女性の生殖能力の相関因子として、Waist-Hip Ratioというものが提唱されておりまして、簡潔に言うとお尻周りを1とした時に腰回りがどれほど大きいか、という比率。女性については0.67から0.80が一般に魅力的な割合だと言われていて、0.70が最も男性の票が集まる比率となっております。男性に関しても魅力的な比率というモノが言われておりまして、0.85から0.95ぐらいが健康範囲。まぁ、男性は肩回りと腰の比率がより重要だとされているんですが。

 

最後になりますが、女性の「貞節さ」は男性には不可欠な要素でございます。ほぼ全ての一夫一妻制文化圏では、結婚後にパートナーが貞潔であること=他の男と関係を持たないこと、は男性が最も重視する要素の一つであります。

これは、前回記事でも指摘した「父親の特定は歴史的に長らく困難だった」という条件に起因しておりまして。簡単に言えば、男性は、自分の遺伝子を持った子供にだけ自分の資源を投入したいので、自分と自分のパートナーとが育てている子供が他人の子供だなんて事態を何としても避けたいわけです。その際に、奥さんが性的に放埓で、妊娠前に複数の男性と関係を持っているとすると、男性側の確証は著しく損なわれます。従って、性的に貞潔で、自分以外の男性と関係を持つ可能性が低いように見える女性を男性は長期的なパートナーとして好むようになってきた、というような説明になります。

 

以上、男女の基本的な趣向を見てきたわけですが、これらの要素は、パートナー獲得競争上、自分で調節、あるいは偽装できる余地があります。その結果、男女は血で血を洗う恋愛模様を各地で繰り広げていくことになるんですが、次回のテーマは「Casual Sex/Attracting a Partner」になりますー。

終わり