さしのみ

東大で法律学んでる傍ら、高齢化とその他諸々の本、論文の要約レビュー等をやってます。感想・ご意見等、時間の限り書いて寄越してください。

孤独を感じると認知症になりやすい、っていう研究

一人暮らしの老人は認知症になりやすいぜ、っていうのは高齢社会学では長年指摘されてきた問題点でありまして、いわゆる「独居老人」の問題を解決しようと行政も市民団体も研究者もこぞっていろいろな施策を打っている昨今ですが、そんな中、客観的に孤独なこともよりも主観的に孤独を感じている場合の方が健康に悪いんじゃないの、という研究結果アムステルダム大学の研究者らから上がってきております。

 

高齢者でなくとも、客観的には孤立してるけど本人はまったく気にしていない人もあれば、周囲からはいつも友達に囲まれているのに本人はいつも不安に駆られている人なんてのもありまして、人間というのはつくづく不思議なもんですが、今回の研究では、後者の方が将来的にアルツハイマー症候群など認知症リスクが高まってしまうんでないの、との示唆が出ております。

 

実験のコンセプトといたしましては、認知症に関係のある様々な社会・医学的な要因を統計的に調整すると、主観的に感じている孤独の度合いがどれほど認知症の発生と相関があるのか、という点に焦点が当てられております。対象は2173名のオランダ在住の皆様でありまして、3年間の経過観察の開始当初に認知症ではなかった方に限られております。

この手の大規模な観察研究は手続きがやたら煩雑だったり、色々な要素に応じて観察対象者が分母から除外されたりと研究者の努力に脱帽の一方、我々受け手側からしても様々疑問を挟む余地があるもんでして、今後のさらなる検証が必要なんですが。

 

さて、回帰分析等、様々な統計的処理を行った結果、主観的に孤独を感じている老人は、そうでない老人に比べて、1.64倍も認知症発症確率が高かったとのこと。注意していただきたいのは因果関係の方向でありまして、孤独を感じているから認知症になったのか、認知症になったから孤独を感じているのかは、依然特定できていないという点。統計分析の痛いところですねー。

ただ、実際の医療現場においてはアンケートで、孤独を感じている、と答えた高齢者に重点的に注意を向けることで、早期発見の絶対数を増やすことが出来るかもしれないわけで、非常に有意義な発見といえるんではないでしょうか。

 

 

「孤独」が肉体的にも精神的にも悪影響が多いぜ、っていう研究は誠に多いんですが、孤独の基準の個人差が大きすぎたり、孤独を改善しようとして孤独に向き合うほどますます孤独感が深まってしまったりと、なかなか「これをすればオッケー!」という分かりやすい解決策が無いのが実情なわけなんですよね、困った困った。

僕は、周りと比べると、それほど孤独に振り回されるタイプではないんですが、とりあえず年とっても元気でいたいので、FacebookInstagramTwitterなど不特定多数の人と関わらなきゃいけないSNSは一日に一回しか見ないことにして、かつ「友達が多いほうが良いに決まってるさ」みたいな良く分からん周囲の主張に惑わされないよう、自分に必要な人間関係を時々点検するようにしているんですが、効果があるんだか良く分からないですねー笑

 

僕以外にも孤独にご関心の方は、SNSと孤独に関する研究はかなり数がありまして、さらに、「孤独は万病の元!」みたいな研究も盛んなので、是非ご参照いただければと思います。

 

孤独の科学 (河出文庫)

孤独の科学 (河出文庫)

 

 終わり。