さしのみ

東大で法律学んでる傍ら、高齢化とその他諸々の本、論文の要約レビュー等をやってます。感想・ご意見等、時間の限り書いて寄越してください。

笑い飯と時間感覚

ふとした契機でカジサックと笑い飯の共演動画を見た際、笑い飯の哲夫が何気なく言ったことに考えさせられた。

笑い飯は幾度もM1決勝に出場しながらも優勝に一歩手が届かないことで有名であった(2010年に遂に優勝)。カジサックを含めダイアン、NON STYLEと様々な芸人がM1を何年も目指し続ける辛さを語る一方で、哲夫はその種の辛さをあまり感じなかったという。本人曰く、「だって、バーキューとか、一年で楽しいこと色々あるやんか」。

 

あぁ、いかに自分が偏った時間感覚で生きているかを思い知った。

旧来から、人間の時間の捉え方には2通りあると。直線的時間と円環的時間。多くは近代工業社会と原始農耕社会、或いは四季のある文化圏とない文化圏の対比で用いられる概念である。直線的時間とは、過去から現在、未来と一直線上に物事が連なっているという見方であり、人の一生や、国の歴史、進化論なんかがその代表である。一方、円環的時間ってのは、同じ物事が日々繰り返されていくという見方であり、年中行事、四季、カレンダー、月の満ち欠けなんかが最たる例。

 

僕は人生のほとんどを直線的時間に基づいて生きて来た。とりわけ、いつも未来のことに執着してきた。いついつまでにこんなことが出来るようになっていたい、将来のためにこんな投資をしておきたい、なんてことばっかりだった。

一方で、哲夫みたいな生き方もある。M1で優勝するのは大事かも知らんけど、毎年恒例のバーべーキューを楽しもう、節分を存分に満喫しよう、なんて具合に。

 

僕は自分の生き方には重要な利点があると思っているし、特段困っていることはない。故に、今は哲夫のように生きたいとは思わないけれど、いつか躓いたとき、あっけらかんとした哲夫の生き方に助けられる日が来るかもしれない。

 

終わり。

将来予測の不確実性【スウェーデン介護産業における顧客のニーズ】

郵政民営化なんてのが最も印象的ですが、最近の水道民営化案で揺れる日本と同じく、高福祉高負担国家スウェーデンでも民営化は最大の政策上の関心の一つであります。中でも、介護産業は、元来政府が税金で運営していた業界であるため、その民営化が非常な注目を集めているわけで。

今回は、その議論状況をまとめてくれた論文を紹介したいと思います。

 

民営化推進派の論調は概ね以下の様

第一に、将来的に介護サービスの量的質的な需要は伸びる。人口は増え続け、かつ高齢化も同時に進行している。さらに、介護利用予備軍の戦後世代は、今の戦前生まれの高齢者に比べて、より多くのサービスを必要とすると考えられる。介護サービスは労働集約的であり生産性の向上が難しく、需要の拡大にキャッチアップするに足るだけの技術革新も見込まれない。

第二に、以上の需要の拡大速度は、税収の増加を大幅に上まわっている。しかも、現代のグローバリゼーションの圧力の中、企業や個人の海外移転がますます容易になる中で、増税は、資本の流出に拍車をかけることになりかねないため、現実的ではない。

以上をふまえると、政府の歳出額を増やさないまま、成長する介護ニーズに応えなければならず、そのためには介護産業の民営化が不可欠である。

 

これに関して、主な提唱者、どういった利益が背景にあるのか、どういった方法で提唱されているのか、という視点で分析し、かつ反対派についても紹介しております。

僕が注目したいのは、「将来求められるニーズは変わる」という前提。民営化推進派はニーズの多様化を力強く説いているわけなんですが、論者らはスウェーデンの全世代が現時点での公的介護サービスへの高い信頼感を抱いており、介護サービスを目的とした増税にかねがね肯定的だという反証データを持ち出してくるんですね。

事の成否は置いて、僕が感じるのは、ここに政治の難しさがあるなぁ、と。あらゆる政治は、民主主義のこと時代、有権者に対して責任を負っているわけであります。更に、事実上、専門家として有権者から一定の自立性を以て、未来予測という業務にあたらなければなりません。

ブラックスワン』や『反脆弱性』などナシーム・タレブの統計学的視点や、カーネマンらのパースペクティブ理論を一度知ってしまうと、人間の未来予測能力に悲観的になってしまうんですが。。。議論の根底にある空しさを抱きつつ、政策議論を学んでいかなきゃならないわけですねー。

象徴天皇と神話

NetflixのCrownってシリーズは、イギリスのエリザベス2世陛下の若かりし頃を扱っておりまして、同じ王室を頂く国の出身者として考えさせられるところも多いわけです。物語の冒頭、若き女王が民主主義の時代における王室の意義について葛藤していると、女王の祖母のメアリー妃はこう答えます。

 Monarchy is God's sacred mission to grace and dignify the earth. To give an ordinary people an ideal to strive towards, an example of nobility and duty to raise them in their wretched lives. Monrchy is a calling from God. 

 

 王室とは、この地上の威儀を正し、祝福するため、神によって与えられた神聖なる使命なのです。市井の人々に、目指すべき理想を、悲惨な日常から人々を救い上げる高潔さと義務との規範を与えることが、王室の意義なのです。王室は神の与え給うた天命なのです。

(Crown, Ep4 "The Act of God"より引用。日本語訳は筆者によるもの)

 

以上で示される見方は、もちろんキリスト教的天命観は別にして、日本の皇室を考えるうえでも大切な示唆を与えてくれているんではないかと。

神話学者のジョーゼフ・キャンベルは、人生の局面において如何にふるまうべきか、について神話が持ち得る教化機能を見直すべきだ、と主張しています(ジョーゼフ・キャンベル「神話の力」早川書房)。神話の多くは、人々が生涯で経験する普遍的なテーマを扱っている場合がほとんどであり、神話のストーリーの中で登場人物が如何に困難を乗り越えるかを知ることで、人々は自身の人生における困難の対処法を学ぶということ。

脱魔術化された現代社会において、数少ない残された「神話」が、今上天皇皇后両陛下の御二人なんではないかと僕は考えています。もちろん、今上陛下が「神」だ言いたいわけでは決してなく、「神武以来の万世一系」に当たるかどうかはココでは一切問題ではありません。むしろ、戦後に象徴天皇制が導入され、平成の世において今上天皇皇后両陛下が構築された「天皇像」は、その影響の及ぶ範囲の人間に対して、見習うべき一つの模範、一つの概念として作用しているのではないかと思う、ということで。

 

身の上を申し上げると、幼少期の僕の面倒を見てくれたのは主に祖母だったんですが、その祖母が今上陛下と同い年であり、日ごろから一人の人間として高齢をおして公務に励む陛下に感心していたこともあり、僕個人からしてみると陛下は「無私」「慈愛」の象徴として、まるで第三の祖父母のような親近感を抱く対象であったわけです。

 

歴史的・法的・政治的な、天皇制をめぐる議論はそれとしては重要でしょうが、平成の節目に当たり、個人が天皇制に如何様な感情を抱き、どのような役割を期待するのか、という議論も見直されても良いんではないか、と思うこの頃でした。

 

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

終わり

テスト前の緊張にどう立ち向かうか、という話

歳が変わりまして、いよいよテストの季節になってまいりました。中学校受験にはじまり、年の初めというのは常に大事なテストが目白押しでして、入学試験、期末試験、センター試験と、学生を困らせるイベントが盛りだくさんって具合なんですな。

僕個人は筆記試験で緊張することはほとんどないんですが、やはり口頭試験だったり、スピーチなど発表を人前でせにゃならかったりすると、多少なりとも緊張するわけでして、色々緊張や不安に対処する術を探しておりまして。今回は多少なりとも科学的コンセンサスが取れている不安対処法をいくつか紹介できればな、と考えております。

 

 

何よりもまず、不安についての研究を考えるうえで、2つ重要な点がございます。

まず、不安を感じる度合い、というものは個人差が非常に大きいんですね。これは心理学で多用されるBIG 5という心理傾向のうち、「神経症傾向」と呼ばれる性質と関わっておりまして、しかも神経症傾向は遺伝的要因で各人のスタートラインが大きく変わってくるんですな。僕はもとより不安とか恐怖とかを感じにくいタイプでして、大自然の中だったら21になる前に死んでそうなんですが、一方、常に不安がちで胃薬が欠かせない、なんて友人もいるわけです。もっとも、この神経症傾向っていうのは、BIG5のうち最も後天的に変えやすい性質だともいわれております。幾つか、不安症を和らげる方法を以下で紹介しますので、ご参照のほど。

次に、不安傾向は変えられと申したんですが、プラシーボの効果も非常に大きいんですね。人間の性格ってのは不定形で繊細なので、どんな要因で性格が変わったのか特定しづらいわけであります。そんなわけで、科学的な定説!ってのは見当たらないんですが、僕個人として正しいと思うモノのみ紹介しますんで、その辺は良しなに。

 

 

短期的対策 ー緊張をその場で解決ー

一時期、TEDなんかでPower Poseなんてのが持て囃されてましたが、近年は生みの親であるハーバードのCuddy教授自身がその効果を疑問視し始めちゃった始末。民間療法とかだとツボだとか何とかありますが、少なくとも僕は良く分かんないんで、今回ご紹介する即席の方法は2つ、「不安の再解釈」、「3人称で自分を励ます」ですね。

【不安の再解釈】

不安を感じるとき、「ああ、不安なんか感じて緊張してたら失敗するんじゃ」なんて思って、ますます悪循環にハマっていくんですよね。これは、色々原因はあるとは思うんですが、「不安=悪いモン」という先入観が邪魔しているケースが多いわけです。

実際、色々調査を見てみますと、不安はそう悪いモンじゃないってことが分かってきたわけでございます。順に見ていきましょう。

①『テスト前に悪夢を見る学生の方が成績が良い』

笑っちゃうような研究ですが、テスト前にテストで失敗する悪夢を見た学生ほど、いい結果を収める傾向にあったらしい。研究者らは、悪夢を見ることで、現実の危機感を高めて学生をより準備に向かわせたり、逆に夢のなかほど現実の状況が悪くないことに気づくことで精神的余裕が生まれたり、など色々な解釈をしております。個人的にテストの夢は見たことないんですが、テストの悪夢を見るってことは、それだけ気にして勉強してきたってことなんかな、と思うんで、これからは悪夢を見れるよう頑張ります笑

 

②『不安の感情を正確に把握している人ほど、仕事や学業でいい結果を収めている』

皆さんの周りにも、追い込まれるとやたら元気になっていい結果を収める人と、追い込まれたらもうそこでお終いになっちゃう人とがいるかと思うんですが、今回の研究はそうした人たちの違いって何だろう、ということを調べてくれております。まず大事な点は、自分の不安感情を正確に把握できている人ほど、自分の不安をモチベーション向上に使おうという意識が強いということ。自分が何に対して不安なのか、どれくらい不安なのかってことをより書斎に掘り下げているってことですね。孫氏の言う通り、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」って具合でして、まずは自分の不安のハンドルを握ろうって話ですな。不安との向き合い方については「マインドフルネス」の項で扱います。更にですね、不安感情を正確に把握している人ほど、学業でも仕事でもいい結果を収めているってことが分かったわけです。くよくよしてる時間がない分、集中力も時間も投資で来てるんでしょうから、これは当然でしょうな。

 

③『不安感は興奮しているのと同じだと思え!という研究』

「オラ、ワクワクしてきたぞ」は悟空の代名詞ともいえる台詞ですが、心理学的にも悟空のマインドセットはいい結果につながるんじゃないっていうハーバード・ビジネススクールからの研究。どういうことかといいますと、不安感を抱いたときに、「今自分は不安を感じていると思っているけど、実は興奮してるんだ!」と自分に言い聞かせるよう指示されたグループは、不安を不安のまま捉えているグループに比べてパフォーマンスが上がることが分かったんですな。実際、不安を感じているときも、興奮しているときも、瞳孔の拡大や心拍の上昇、手足の発汗等、肉体的な反応は似ておりまして、不安と興奮って同じことなんだと解釈しようって話。スピーチの前やテスト直前には、「ああ不安だなぁ」って思うんでなく、「オラ、ワクワクしてきたぞ!」とつぶやいていきましょう笑

 

④『不安を感じやすい人ほど、決断のクオリティが高い、という研究』

 ここでいうクオリティの高さというのは、損失回避がうまい、ということ。意思決定の局面では、もちろんどれほど多くの成果が見込まれるか、という点も重要な評価軸ですが、同様に、いかに大きな損失を回避するかということも大切だと言えます。サイコパスは、不安を感じにくいんで、これとは真逆なんでしょうなぁ。

 

以上、不安には良い側面があるぜ、ってことを知ることで不安を再解釈して、負の連鎖を断ち切りましょう。以前ご紹介したSilver Lining Theoryなんかと似た方策ですねー。

 

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【3人称で自分を励ます】

言葉の使い方を変えるだけで精神状態が変わるのは、以前にもご紹介したように、個人的な最大関心事の一つなんですが、今回は「人称を変えるだけで、不安の軽減効果が激しく変わるぜ」という研究

陸上競技なんかでスタート前に選手が一人でブツブツつぶやいている姿なんかをたまに見かけますが、その時に「俺は絶対にやれるさ」というのと「(自分の名前)は絶対にやれるさ」というのでは、どちらが良いパフォーマンスにつながるんでしょうか。今回の論文は6つの実験をまとめたものでして、結果から言いますと、自分の名前を使ったり二人称を使ったりした被験者は、一人称で自分を励ましたグループに比べて、第一印象も良く、かつスピーチもうまくいくことが分かりました。

つまり、緊張する本番前には、自分を他人の視点から励ますのが良い、ということ。前述の「不安=興奮」の枠組みと合わせると、「(自分の名前)はワクワクしてんぞ!」ってな感じでやるのが最も効果的かも笑

 

 

以上、すぐできる不安対策法をご紹介しました。

これ以外にも、マインドフルネスや運動を取り入れる方法はいくつかあるんですが、今回はこの辺で。今後、その他の方法や、また勉強法などについてもまとめられると良いかなと思っております。

終わり。

人間の性的欲求を進化心理学で解明するぜ【第三回 体目的の。。。】

リクエストをいただいたので、少し長めに書いてこうかなと思っとります

 

早速ですが、以下のような状況を想像してください。

あなたは大学生で、昼休みに自分の大学のキャンパス内を歩いています。授業も一通り終わって、徐々に日も傾いてきています。そんな中、可もなく不可もない容姿の異性が近づいてきて、こう言います。

「こんにちは、最近よく見かけるんだけど、あなたってすごく素敵ですね。今晩一緒に寝ない?」

さて、あなたはどう返答するでしょうか。丁寧に断る?ぶちギレてその場を立ち去る?それとも喜んでOK?

 

naoshiaut.hatenablog.com

 

 

上記の実験は1978年と1982年の2回、フロリダのとある大学で行われた社会心理学の実験でして、体目的の異性のアプローチに対して男女でどのような差があるか、ということを調べたもの。平均的な容姿の異性に突然「今夜一緒に御飯でもどう?」「今夜うちに来ない?」「今夜一緒に寝ない?」の3パターンで質問された場合、それぞれに対してどれぐらいの割合の学生がOKを出すかを調べたわけです。その結果、概ね女性よりも男性の方が突然の誘いに対してOKを出す割合が高いことが判明したわけです。

ちなみに、上記の「一緒に寝ない?Would you go to bed with me?」に対して、75%の男子学生がOKを出したのに対して、OKを出した女子学生は一人もいなかったとのこと。開放的なフロリダの風土もあるでしょうが、日本でも大まかな男女差は一緒でしょう。

 

この実験が好例ですが、体目的のSEXを考える際に基本となることは、女性よりも男性側に高い「一夜の恋」に対する需要があるということ。言い換えれば、男性は兎にも角にも「たくさんの異性と寝てみたい」という欲求が女性に比べて高く、短期的SEXにものすごい情熱を持っていること。事実、女性と比べて、生涯の経験人数の理想値、一日平均の自慰行為の回数、「自分は性欲が強いと思う」と答えた割合のいずれにおいても、男性は女性を上回っておりまして、更に、男性は、知り合ってからより短い時間で性交に移ろうとする傾向も高く、かつ、恋人に対する基準と比べて、体目的のSEXの際には著しく異性への要求水準を下げる、つまり誰でもよくなる傾向が世界的に確認されております。

これに関して、The Closing Time Effect、閉店間際効果とでも言いましょうか、という面白い心理バイアスが確認されています。端的に言うと、バーが閉店間際に近づくと、バーに残っている異性をより魅力的に感じる、という心理的傾向。研究者らが金曜日のバーの客に10点満点でその日のバーの異性の平均点を算出してもらうんですが、閉店が近づくにつれてその平均点が上がっていくわけです。直截に言えば、「点数の高い」異性というのは早々に相手を見つけてバーから出て行ってしまうはずだと考えると、この平均点の上昇は「残り物ばっかり」のバーの状況とは食い違うことになります。これに対して、研究者らは、「皆とにかくお持ち帰りがしたいから、閉店が近づいて焦るほど、異性に対するハードルを下げてるんだ」と推測し、The Closing Time Effectと名付けたわけですねー。しかも、大事な点は、この傾向は男女ともに見られたものの、男性により顕著に表れたということ。女性側がつけた平均点が5.0点か5.5点まで最終的に上昇した一方、男性側の採点は5.5点から6.5点まで上がったわけで、男がより必死になっていることが推察されます笑

 

一方の女性はというと、とかく短期的SEXには消極的。性的な妄想の頻度も男性よりも格段に低く、かつ「一夜の過ち」を後悔するのはほとんどが女性だという結果が出ております。もっとも、あくまでアンケートなんで、「こういう風に答えておかないと、後で困りそう」という文化的バイアスが働いて、実際よりも「貞淑ぶる」女性が多い可能性も捨てきれませんが、依然、男性比べて女性は体目的の成功に否定的といえるでしょう。

 

 

 

ここまで言うと、「なんか男はSEXのことばかり考えてて、女性が可哀そう!一晩限りのSEXは男の勝手だ!」という怒りの声が聞こえてきそう。ただ、これに対して、本の筆者は「男性が上記のような傾向をもっているということは、とにかくSEXがしたいと思うことに進化論的利点があったからであり、かつ、そうした男性の欲求にこたえて来た女性が一定数常に存在したことの証左だ!」と申しております。さて、どういうことなのか、詳しくみていきましょう。

 

まず、太古の昔から女性は複数の男性と同時に関係を持つことがよくあったということは、男女の体の仕組みから明らかだと、筆者は言っています。

まず、人間の男性の睾丸が他の霊長類に比べて大きいこと。筆者は体重比を参照しているんですが、体重における睾丸の重さの比率はゴリラが0.018、オランウータンが0.048なのに対して、人間は0.079だそう。睾丸が大きいほど、精子の量が増えるため、人間の比較的大きな睾丸は複数の男性間での競争があった結果だと解されるとのこと。

次に、精子の量の変動。男性は、パートナーとの性交の間隔が大きいほど、一回に射精する精子の量が増えるという実験結果があるようでして、毎日成功しているケースと比べて、最大2倍ほど量が増えるんだと。一介に射精する量が多いほど、女性の膣内に残留している他人の精子を押し出す量が増えるため、男性のこの傾向は生物学的に女性が複数の男性と成功する傾向にあったことの結果だと、筆者は主張しています。

さらに、女性のオーガズムの存在も、複数の相手との性向が常だったことの証左だと筆者は主張しております。男性はオーガズムで射精するため、「男性のオーガズム」というのは生物学的に理解しやすいんですが、「女性のオーガズム」っていったい何のためにあるんだろう、という問いは依然、生物学上の難問として残っています。それに対して、筆者は「女性のオーガズムは複数の男性から最も良い男性を選別するためにあるんだ」と声高に言うわけです。その背後には、女性がオーガズムを経験した場合、性交後に膣から押し出されてしまう精子の量が減るという事実があります。つまり、体の相性が良く女性がオーガズムを経験できるような男性の精子が自分の卵子とより高い確率で受精できるよう、女性はオーガズムによって必要な精子とそうでない精子とを選別しているというわけですな。一方で、男性の乳首と同じように、女性のオーガズムは進化上残った残留物に過ぎない、という意見も有力だそうで、あくまでこの説は本の筆者の見解に過ぎないんですが、何とも男性諸君には恐ろしい話ですね。

 

 

 

以上が、女性が複数の相手と成功してきたことの進化論的根拠になるわけですが、実際に、複数の相手とSEXすることは女性にとってどんなメリットがあるんでしょうか。ここから、ロマンチックのかけらもない話にはなりますが、興味ある方はどうぞ笑

 

まず、性行為を対価として、経済的・社会的援助を男性から受けることが最大のメリットのうちの一つといえるでしょう。例えば、原始社会において、食物が不足している時期に、ある一人の男性が獲物を携えて村に帰って来たとします。むらで待っていた女性の側からすれば、自分の生存、あるいは自分の子供の生存のためには、その男性の獲物を自分に分けてもらう必要があるわけです。もちろん男性は自分のパートナーと自分の子供に最初に獲物を分け与えるでしょうが、その余りは最も好条件を提示した他者へ与えられるはずです。そこで、前述のような男性における「色んな女性とSEXしたい」という大きな欲求を考えれば、女性側から見ればSEXを食べ物の対価として提供することは非常に有効な作戦といえるわけです。歴史的にも世界のどの文化においても「買春」が存在することが、男性の性的欲求に対して、女性側が経済的代価を求めてSEXを提供していることの証左といえるわけです。更に、第一回目のまとめで説明しましたが、女性は男性の富と権力を非常に高く評価する傾向があるんですが、この傾向は、女性が愛人を求める際に、さらに顕著になることが分かっています。つまり、女性にとって、SEXは経済的・社会的資源を男性から獲得するための手段だと言えるわけであります。

第二として、短期的性交を通じて、女性は男性のパートナーとしての価値をより正しく見極められると考えられます。SEXを通じて、男性がどれほど女性に気を配れるか、柔軟性があるか、我慢強いかが推測でき、かつそもそも「とりあえずヤレれば良いや」と思っているのか、長期的な関係を望んでいるのかも分かるわけです。昔、ダウンタウン松本と島田紳助の「松紳」という番組で紳助さんが提唱されていた面白い公式がありまして、男にとって「好き-ヤりたい=愛情」であり、しかも一回SEXしてみないと男はどれぐらい相手を愛しているのか自分でもわからない、ってんですね。これは女性にとって有意義でして、SEXの後にどれぐらい男の方があなたを気遣ってくれるかで、その人がどれほどあなたを「愛しているか」が分かるわけですな。

第三に、短期的性交は、女性にとってパートナーのバックアップを用意するために有効だと言えます。統計的に男性というのは女性よりも短命でして、かつ古代においては戦役で旦那が死んでしまうなんてことは今よりも多かったと言われています。更に、相手が経済的に落ちぶれて十分な資本を提供できなくなったり、DVなど女性に多大な不利益をもたらすこともあり得るわけです。その際には功利的にはすぐさま違う相手に乗り換えることが女性に自信にとってもその子供たちにとっても有益であって、そのためには継続的に他の男性と関係を持っていたほうが、乗換が早い、という理論。

第四に、短期的性交を提供することで、より良い遺伝子を持った子供を産めるかもしれないこと。これは男からしてみると背筋が凍る話ですが、生物学には"the sexy son hypothesis"という仮説がありまして、「より魅力的な男性と子供を設けることで、自分の子供がより魅力的になる確率が上がり、その結果、自分の遺伝子が残りやすくなるため、女性は魅力的な男性を求める」と言われています。現実に適応すれば、とにかく「いい男」の遺伝子を獲得することが女性の最大関心事であって、正直自分のパートナーとの間の子供であるかどうかは女性にすればどうでもいいわけで。パートナーには、安定的に資源を自分とその子供に提供してくれることを最も求めているからですね。そうしますと、多少魅力的でなくとも、誠実で経済・社会的に安定している男を旦那として選びつつ、不誠実そうだけども身体的にも精神的にもより魅力的な男性との間に旦那に隠れて子供を設けるのが最も戦略的な方法になるわけです。これは二つの科学的根拠がありまして、まず、女性は排卵期になるとより肉体的に「男性的な」男性を好む傾向が強くなります。つまり、マッチョで声が低く、対称性のある男性ですね。更に、男性っぽさの最大の要因の一つたる男性ホルモン、テストステロンは、それが多いほど、男性をムキムキにして声も低くするんですが、一方で性欲や権力志向も同時に高めるので、男性を不誠実にもしがちなんですなー。

 

 

まとめますと、一般に一晩限りのセックスという話になると「男性が女性を搾取している」というようなイメージが強いと思うんですが、もちろんその側面は大いにある一方で、女性が意識的に男性を利用する余地も多分に残されているとも言えるわけであります。なんせ、女性の売り手市場になっているわけですからねー。

One Night Standにおける、より多くの相手を引き付けるための男女別の戦略は、

男:長期的パートナー探しと同様に、金と権力を手に入れつつ、体を鍛えていく

女:「ヤリマン」と言われないよう注意しながら、SEXさせてくれそうな雰囲気を出す

って感じでしょうか笑。

もっとも、あくまで進化論をふまえて説明できる範囲でしかないですし、マズロー欲求段階説でいうところの高次の欲求に一切立ち入っていない説明なんで、実際の方法はいろいろあるでしょうけれど。それについてもいつか時間があればまとめたいと思っておりますー。

 

本書では、「同性愛ではどうなん?」とか、男女の戦略が変わる具体的状況だとか、その他カジュアル・セックスを説明する理論だとか、今回のまとめで扱っていない点もたくさん掲載されているので、ご関心の方は是非。

 

The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating

The Evolution of Desire: Strategies of Human Mating

 

 

それと過去記事も是非笑

 

naoshiaut.hatenablog.com

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終わり

孤独を感じると認知症になりやすい、っていう研究

一人暮らしの老人は認知症になりやすいぜ、っていうのは高齢社会学では長年指摘されてきた問題点でありまして、いわゆる「独居老人」の問題を解決しようと行政も市民団体も研究者もこぞっていろいろな施策を打っている昨今ですが、そんな中、客観的に孤独なこともよりも主観的に孤独を感じている場合の方が健康に悪いんじゃないの、という研究結果アムステルダム大学の研究者らから上がってきております。

 

高齢者でなくとも、客観的には孤立してるけど本人はまったく気にしていない人もあれば、周囲からはいつも友達に囲まれているのに本人はいつも不安に駆られている人なんてのもありまして、人間というのはつくづく不思議なもんですが、今回の研究では、後者の方が将来的にアルツハイマー症候群など認知症リスクが高まってしまうんでないの、との示唆が出ております。

 

実験のコンセプトといたしましては、認知症に関係のある様々な社会・医学的な要因を統計的に調整すると、主観的に感じている孤独の度合いがどれほど認知症の発生と相関があるのか、という点に焦点が当てられております。対象は2173名のオランダ在住の皆様でありまして、3年間の経過観察の開始当初に認知症ではなかった方に限られております。

この手の大規模な観察研究は手続きがやたら煩雑だったり、色々な要素に応じて観察対象者が分母から除外されたりと研究者の努力に脱帽の一方、我々受け手側からしても様々疑問を挟む余地があるもんでして、今後のさらなる検証が必要なんですが。

 

さて、回帰分析等、様々な統計的処理を行った結果、主観的に孤独を感じている老人は、そうでない老人に比べて、1.64倍も認知症発症確率が高かったとのこと。注意していただきたいのは因果関係の方向でありまして、孤独を感じているから認知症になったのか、認知症になったから孤独を感じているのかは、依然特定できていないという点。統計分析の痛いところですねー。

ただ、実際の医療現場においてはアンケートで、孤独を感じている、と答えた高齢者に重点的に注意を向けることで、早期発見の絶対数を増やすことが出来るかもしれないわけで、非常に有意義な発見といえるんではないでしょうか。

 

 

「孤独」が肉体的にも精神的にも悪影響が多いぜ、っていう研究は誠に多いんですが、孤独の基準の個人差が大きすぎたり、孤独を改善しようとして孤独に向き合うほどますます孤独感が深まってしまったりと、なかなか「これをすればオッケー!」という分かりやすい解決策が無いのが実情なわけなんですよね、困った困った。

僕は、周りと比べると、それほど孤独に振り回されるタイプではないんですが、とりあえず年とっても元気でいたいので、FacebookInstagramTwitterなど不特定多数の人と関わらなきゃいけないSNSは一日に一回しか見ないことにして、かつ「友達が多いほうが良いに決まってるさ」みたいな良く分からん周囲の主張に惑わされないよう、自分に必要な人間関係を時々点検するようにしているんですが、効果があるんだか良く分からないですねー笑

 

僕以外にも孤独にご関心の方は、SNSと孤独に関する研究はかなり数がありまして、さらに、「孤独は万病の元!」みたいな研究も盛んなので、是非ご参照いただければと思います。

 

孤独の科学 (河出文庫)

孤独の科学 (河出文庫)

 

 終わり。

 

瞑想の種類とその効用

昨年スタンフォード大学のサマースクールに参加したんですが、その主目的の一つはマインドフルネスのメッカ、スタンフォード大学でマインドフルネス=瞑想が如何様に教えられているか体験しに行くこと。教室に入ってみるとあらビックリ、高校生から博士課程、一般参加まで、教室中が人であふれかえっている。改めて、マインドフルネスへの注目度の大きさを体感したわけです。

 

さて、マインドフルネス=瞑想と言いましてもいろいろございまして、今回ご紹介するマックスプランク研究所の論文では4つの瞑想が取り上げられておりました。

・数息法(Breath counting)

・ボディ・スキャン(Body Scanning)

・愛の瞑想(Loving-kindness Meditation)

・思考観察(Observing-thought Meditation

なんだか胡散臭そうな訳になってしまい恐縮です。。。

瞑想と聞くと優れて宗教的な響きを持たれる方が多いかと思うんですが、近年、仏教における瞑想が脳科学認知科学の両分野において非常な注目を集めております。近年流行したケリー・マクゴニカル博士の「スタンフォードの自分を変える教室」が好例ですが、実社会で必要とされる「意志力」を鍛えるという目的、或いは共感力の涵養、不安症対策の文脈で、注目の度合いが日に日に高まっているという具合です。

瞑想の効果を科学的に理解するうえでは、脳科学の観点から説明するのが最も効果的と思います。

人間の行動や感情はほとんど脳からの信号で統御されております。そのうち、感情や欲求に関する信号を司る主要な部分が偏桃体Amygdalaでありまして、脳の最も原始的な機能であり、脳の中心部に位置しております。逆に、意志力や感情コントロールで注目されているのが前頭葉Frontal Cortex。霊長類、特に人間において最も高度な発達が見られる、脳の発達上最新鋭の部分でありまして、おでこの下あたりに位置しております。

一般には、いろんな感情や欲求を喚起する信号が偏桃体から出ておりまして、感情にあらがったり欲求を我慢したりする際には前頭葉がその信号を抑制することになります。

瞑想の話に戻りますと、多くの実験で瞑想している最中に前述の前頭葉が活発に活動していることが確認されています。更に、瞑想を長期間続けることで、前頭葉が大きくなる、つまり前頭葉のコントロール能力が向上することが様々な研究者によって報告されています。言い換えれば、瞑想は、感情や欲求をコントロールしたり、意志力を高めたりするのに有効な、科学的に信ぴょう性のある方法だ、といえるわけであります。

 

はてさて、今回の研究は、今まで数多の瞑想の方法について研究がなされてきたけど、それぞれの瞑想の手法で得られる効果は違うの?という疑問に答えてくれています。取り上げられた瞑想法が上記の4つの方法ですね。まず初めに、各瞑想法について解説して参りたいと思います。

1.数息法 Breath Counting

基本は自分の呼吸を数えることに意識を集中することですね。具体的な方法はいろいろあるんですが、ポイントは概ね以下。

①息を吐くのに、息を吸うのに使った時間の2倍使う。例えば、3秒かけて吸ったら、6秒かけて吐く。

②座った状態で行う。胡坐でも、椅子の上に座るのでも、とにかくリラックスできれば何でもいい。

③自分の意識が何処に向いているのか、常に意識する。呼吸から意識がそれたとしても、それていることを事実として認識して呼吸に意識を再度向ける。

僕は、高校1年ときに行った神奈川の禅寺の経験を生かして、以下のようにしてやっております。

①胡坐をかく。

②吸うのに5秒、吐くのに10秒

③鼻だけで息を吸い、鼻と口で吐く

④鼻と口に息が当たる感覚に注目する

⑤背筋がまっすぐになるよう、肛門に重心が来るよう意識する

この瞑想法のポイントは、誰しも呼吸以外の物事に意識が散ってしまうこと。集中できないことは決して悪いことではなく、むしろ集中できていない自分を認識して呼吸に意識を戻そうとすることに意味があるって具合。

 

2.ボディ・スキャン Body Scanning

その名の通り、自分の体の部位の感覚に注目していく瞑想法。具体的な手順は、数息法と似てるんですが、以下の通り。

①座った状態でも、寝た状態でも良いので、自分がリラックスできるような体制になる

②頭から順に、自分の体の部分の感覚に注目していく

③自分の意識が何処に向いているのか、常に意識する。呼吸から意識がそれたとしても、それていることを事実として認識して呼吸に意識を再度向ける。

数息法では呼吸にだけ注目しましたが、今回は体の各部位に集中していくという感じ。僕は以下のようにやっておりますので、参考までに。

①ベッドに横になる

②顔の筋肉→腹部→右手→左手→右足→左足→顔の筋肉→・・・という順で、一つの部位に2分半から3分程度意識を向ける(先ほどの吸うのに5秒、吐くのに10秒の呼吸をだいたい10回分)

やってみて面白いのは、痛みやかゆみなど普段は無視していたような小さい感覚により繊細に気づけるようになり、かつ、特にかゆみに顕著ですが、実際にかゆい部分を掻かずとも意識を向けるだけで徐々にかゆみが引いていくこと。トレーニングとしてではなく、あそびとして面白いのでオススメ。

 

3・愛の瞑想 Loving-kindness Meditation

もっとも胡散臭い瞑想法ですが、具体的な要領は以下。

①座位でも臥位でもいいのでリラックスできる方法で。

②好きな人(親族でも友人でも)が、自分と同じように悩みを抱える人間であり、日々自分と同じようなことで悩んでいることを想い、その人が幸せな日々を送れることを祈る。

③好きでも嫌いでもない人(取引先の人や授業で一度だけ一緒になった人など)が、自分と同じように悩みを抱える人間であり、日々自分と同じようなことで悩んでいることを想い、その人が幸せな日々を送れることを祈る。

④嫌いな人が、自分と同じように悩みを抱える人間であり、日々自分と同じようなことで悩んでいることを想い、その人が幸せな日々を送れることを祈る。

⑤全く知らない人、或いは人類全体が、自分と同じように悩みを抱える人間であり、日々自分と同じようなことで悩んでいることを想い、その人が幸せな日々を送れることを祈る。

しょうもない自己啓発セミナー感満載ですが、驚くことに、前述のスタンフォード大学のサマースクールで教えられていたのが、この愛の瞑想なんですよねー。

実際にやってみると面白いんですが、各段階で他人の色んな事情に考えが及ぶわけです。例えば、親しい人の幸せを考えるとき、その人がどんなことをうれしいと思うか、更に何をすればその人を幸せにできるのか、なんてことを考えるので、親しい人をさらに深く理解できたように感じるわけです。更に、嫌いな人の悩みを考えるときが醍醐味でありまして、「あの時、あの人はすごく嫌な感じだったけど、実は裏でこんなことで悩んでいて僕に対応する余裕が無かったんじゃないかなー。」なんて思うと、少しだけでも相手を嫌いな気持ちが和らぐわけであります。もっともそれだけでは嫌いな人は嫌いなままなんですが、それ以降、いやなことをされても少しは許せるようになるんですな。

 

4.思考観察 Observing-thought Meditation

自分が考えていることに意識を向ける瞑想法。具体的な手順は以下。

①座位でも臥位でも良いので、リラックスできる体勢に。

②自分の頭に起こった思考に意識を向けて、それを観察する

至極単純でありまして、個人的なコツは自分の思考に名前を付けるようとすること。以前紹介したインナーパーソナリティという考え方に近いんですが、自分の思考にラベリングすることで自分の思考や感情を相対化して、コントロールしやすくするわけであります。例えば、「語学の勉強しなきゃな―」という思考がわいてきたら、その思考に「スキルの向上が好きな自分」という名前を付けて、別の思考が起きるまで今の思考がどのように展開するか見つめてみるって感じ。以前の記事で詳しく扱っているので、是非ご参照のほど。

 

 

naoshiaut.hatenablog.com

 

さて、以上紹介した瞑想法が具体的にどんな効用があることが判明したのか、見ていきたいと思います。

1.数息法→瞑想初心者向け

研究者らによれば、数息法は全ての瞑想の基礎となっているため、特段目立った効用は無いものの、全般的に脳の認知能力向上に効果があったとのこと。集中力・ポジティブ思考・メタ認知すべてがそこそこ上昇。

 

2.ボディ・スキャン→気が散りやすくて困っている人向け

研究者らによると、ボディ・スキャン瞑想では、自分の身体感覚への意識が向上し、かつ邪魔な思考のせいで気が散る傾向が著しく低下したとのこと。更に、「今この瞬間」に集中する意識も高まり、かつ他者について考える割合が高くなるとの結果。つまり、集中力を激しく高めた人にオススメの方法ってことになるでしょうか。

 

3.愛の瞑想→ポジティブな思考・幸福感を向上させたい人向け

瞑想内容から明らかですが、愛の瞑想は自分や他者に対するポジティブな思考の割合を著しく増加させる効果があったそう。ネガティブな思考の傾向に変化はなかったことに注意が必要なんですが、ポジティブなことをより多く考えられるようになるんで、精神衛生を保つことにも効果がありそう。

 

4.思考観察→自己コントロールを向上させたい人向け

この瞑想の最大の利点は、思考をメタ認知することと、思考にとらわれることとを明確に区別できるようになること。その結果、過去や未来にことにとらわれる傾向が減少し、かつポジティブやネガティブな思考にいちいち振り回されることが減るって具合。僕は、このタイプの瞑想を最も好んでやっております。

 

 

以上、様々な瞑想を紹介しました。瞑想でググると色んな情報が出てきますんで、是非ご関心の方はお試しあれ。

ちなみに、スタンフォード大学で瞑想の授業を担当されていたのはFrederic Michael Luskin博士だったんですが、彼が授業中に推薦していた図書を以下、掲載しておきますので、愛の瞑想に興味ある方は是非ご参照のほど。

 

8 Minute Meditation Expanded: Quiet Your Mind. Change Your Life. (English Edition)

8 Minute Meditation Expanded: Quiet Your Mind. Change Your Life. (English Edition)

 

 

 

The Mindful Path to Self-Compassion: Freeing Yourself from Destructive Thoughts and Emotions (English Edition)

The Mindful Path to Self-Compassion: Freeing Yourself from Destructive Thoughts and Emotions (English Edition)

 

 

 

「あの人のせいで…」をやめると、人生はすべてうまくいく!

「あの人のせいで…」をやめると、人生はすべてうまくいく!

 

 終わり。